食堂車は憧れの存在

1964年12月の「時刻表」を読んでみよう、というカテゴリ。

 この1964年は、10月10日に東京オリンピックが開幕、その直前10月1日に東海道新幹線が開業した記念すべき年である。

 そんな歴史的な年の終わりの時刻表が、なぜ私の手元にあるのか。実は、以前に一緒の職場で働いていた先輩がくれたのである。お父様が持っていたそうで、「どうせなら大事に読んでくれる人の手に」ということで、有り難くも譲っていただいたのだ。

交通公社の国鉄監修・時刻表

 改めて表紙を見ると「交通公社の国鉄監修・時刻表」とある。若い人は知らないかもしれないので補足すると、「交通公社(日本交通公社)」とは今の「JTB」、「国鉄日本国有鉄道)」は今の「JR」である。

 面白いのは、国鉄時代はこの交通公社の時刻表が国鉄監修の「公式」時刻表だったのだが、1987年に民営化されJRが発足すると、交通新聞社発行の「JR時刻表」が「公式」に取って代わったことである。今でも「JTB時刻表」は販売されているが、もう公式ではないため、駅にも置かれてはいない。(ちなみに、私自身も「JR時刻表」の方が見やすくて好みである)

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 さて、そんな昔の「時刻表」を開いてみると、鉄道好きでなくても興味を引く記述が沢山あるので、気が向いた時に記していこうと思うが、その第1回目には車内の食事についての案内をご紹介しよう。

車内でのお食事ご案内

 今の日本の鉄道では、食事の提供は一部の観光列車や豪華列車にあるのみだが、当時は長距離列車にはほぼ食堂車が連結されていた。これはその案内である。

 コーヒー1杯50円、ざるそば1枚70円、カレーライスは1皿150円、うな重が300円といった記述も楽しいが、なぜか東海道線山陽線の電車急行で寿司がラインナップ豊富に用意されているのが面白い(えびが60円に対して、マグロのトロが30円というのも興味深い)。

 そして、何より目を引くのが、特別ビーフステーキ定食750円! やっぱりビフテキは高級料理なんだよなぁ~

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 残念ながら、1975年に生まれ、大人になってから鉄道旅行に目覚めた私にとって、国内での食堂車経験は東海道新幹線でカレーライスを食べた一度しかない。

 特急や急行で何時間も掛かる鉄道の旅の楽しみの一つが、窓の外を流れる景色を見ながらの食堂車での食事だったのだろうと思うと、高速化の代わりにそれがなくなった現代は、文字通り味気ないな…と寂しくなるのは、私だけではないだろう。